Message from Prof. Kase 加瀬公夫教授 // IESE Business School

(※加瀬教授は、現在は国際大学(日本)にて教鞭を執られておられます。以下は、IESEに居られた当時のメッセージです。)

 

 

私自身の経験をもとにして

A)何故MBAを学ぶ意義があるのか、また

B)何故IESEなのか

 

という点についてお話しさせて頂きたいと思います。

 

(A)MBAプログラムで学習する意義

 

大きくみて以下の三点があげられると考えています。

 

1)経営の定石を学ぶこと

2)最新の知識を学ぶこと

3)考え方を学ぶこと

 

まず一般的に経営の定石を学ぶのに通常10-15年以上の年月がかかるはずですが、経営大学院に行くことにより、過去の経験の蓄積とその分析とを理論として学ぶことができます。他のひとたちは、そうした知識を得るのに多くの時間をかけなければならないのに、経営大学院に行けば2年(プログラムによっては1年)で多くのことを学び、その学びをすぐ事業に応用することができます。

 

定石を知っていれば特定の状況でどんな意思決定を行えばリスク回避ができるかが分かります。また競合他社が定石通り動くとすれば、かれらの戦略を予想することができ、それにたいする対策を作成する事ができる。つまりそう言った意味で競争優位に立つことができるのです。

 

つぎに最新の知識、情報を学ぶ重要性というのは何か。

 

過去の経験、つまり経験知にもとづき意思決定を行い、それが成功に直結するためには、ある前提条件が存在することが不可欠です。それは過去の事例、趨勢を未来に向けて敷延したとき、実際、将来生じる状況がその敷延と大概合致することです。

 

しかし、不確定要素が大きくなりつつある現在の世界においてそういった前提条件が成立する産業というのはほぼ消滅してしまったと考えた方が良いでしょう。(例、コダックの破産<==フィルム業界は化学反応による画像処理からディジタル処理へと業界の根本が変わった)

 

つまりここでは知識、情報により(1)前提条件低下/消滅を知り、かつ(2)不確定要素を少しでも減らす必要があります。

 

最後に考え方の習得ですが、じつはこれが経営大学院で学ぶ最も大事なことと思います。これは「なぜIESEなのか」という質問と関連するので、IESEの紹介とあわせて以下お話させて頂きます。

 

(B)なぜIESEなのか

 

実際、経営の定石や新しい知識を学ぶことが一番の目的ならば、IESE以外での一流と言われる経営大学院に行こうがIESEに行こうがあまり相違がないと思います。むしろ知識伝授の効率からいえばLectureタイプの学校へ行った方が大量の知識を得る事が出来るのではと推測できます。

 

そんな中でIESEを薦める際に通常言われるのは、学生の出身国の多様性とケースメソッドです。ここでは後者について私見を述べさせて頂きます。

 

ケースメソッドでほぼ100%授業を行っているのは、世界的にみてIESE以外ではごく少数だと言われています。私自身、MBAに在籍していた頃の経験から言っても、ケースメソッドに慣れるのにはかなりの数をこなす必要ありました。したがって、2年間で700近い数のケースを分析するIESEのような学校でない限り、その授業の恩恵を最大限受けることは難しいと思います。

 

それではケースメソッドとはどのようなものか。

 

1) 企業などが直面する状況を詳細に描いた情報を読み込み

2) 描かれた状況の中で何がKey Issueであるかと定義/意味付けを行う

3) 解決策が必要な場合、複数の代替案のプラス/マイナスを比較した後、

  解決策を選択する

4) 具体的な実施策を作成する

 

という流れで行われる演習です。

 

ケースメソッドを授業で使用する目的は、「考える力」をつけるというものです。つまりひとには見えない隠れた問題、将来問題化するであろう事項を読み取る能力を学ぶことです。それは現実を再解釈する能力とも言えると思います。

 

日本において企業に就職して受ける職業研修は、一般に当事者レベルでの効率的問題処理能力の育成だと思いますが、IESEの教育はその上の段階、つまり最高経営責任者としての戦略的能力の育成が目的です。言ってみれば兵卒、下士官、尉官、佐官ではなく将官育成するのが目的なのです。

 

最後に、IESEという学校が他の学校とは大きく異なるものはなにか。

それは全体の雰囲気の明るさ、教員、サポートスタッフの親切さであろうと思います。私自身は日本、スペイン、イギリスで教育を受け、日系企業、イギリス系多国籍企業、米国にある国際機関で働き、スペイン、中南米、日本、韓国、中国などで教えた経験がありますが、IESEほど雰囲気の好いところはなかったと確信しています。

 

IESEでお会いできることを楽しみにしております。

 

加瀬公夫