My challenge for case competition

はじめまして、IESE 2年の溝垣明日香です。本日は、私が優勝をすることができたNovartis Masterminds ChallengeというCase Competitionの体験について、皆さんにお伝えできればと思います。

Case competition(ケースコンペ) とは?

 

ケースコンペとは、企業や団体(学校外)がビジネス課題を提示し、B-schoolの学生が(通常は校内で)チームを組んで解決策を提案するものです。対象はヨーロッパ校、US校、など毎回異なり、開催期間も数日〜半年、優勝チームに与えられる報賞も金銭、会社からの推薦状、インターンシップなど様々です。

 

私がビジネススクール選びをしていた頃、各校在校生の方々にこのケースコンペの機会が校内でどの位あるか、よく尋ねていました。私は音楽業界という特殊な経歴でビジネススクールに入学しておりますが、机上の学びをより一般的なビジネスに実践する機会としてケースコンペが最も実用的だろうと考えたのがその理由です。

 

入学後、私は以下の3つの理由を元に改めてケースコンペへの参加を検討しました。

 

1.リアリティを感じながらビジネスケースに取り組む

2.ゼロから戦略作りに取り組む

3.未経験業界へ進む為のエントリーポイントとする

 

特に1に関しては、従来のケーススタディは過去の事例がほとんどで今現在起きているビジネスとの距離を感じることがあること、通常のグループワークではメンバーがそれぞれ異なるモチベーションを持っているため常に同じ士気で同じ課題に取り組む事が難しいと気づいたことで、通常の授業で学べない領域を補完する手段としてケースコンペがふさわしいと考えました。また3について、入学当時コンサルティング業界くらいしか関心がなかった私ですが、ヘルスケア業界出身のクラスメートとの出会いをきっかけに自分なりに業界研究を進めていくうちに製薬業界に関心を持つようになり、「関連するケースコンペには絶対に参加し、その業界に入るためのファーストステップにしたい」という目標が生まれました。

 

Novartis Masterminds Challenge

私が参加したNovartis Masterminds Challengeは、 グローバル製薬会社Novartisが主催しているケースコンペで、ヨーロッパの主要MBA校から約80チームが参加、全体で3ラウンド、約半年間に及ぶ長期のプロジェクトです。私たちに与えられたお題は、NovartisとKenyatta National Hospitalが官民連携で取り組んでいるサハラアフリカの腎臓移植数拡大プロジェクト(interlife)の移植実績の向上、サステナブルなプロジェクト運営の実現施策の提案というものでした。

 

 

チーム結成

官民連携、ケニア、製薬ビジネス???関連性が全く理解できない状態でしたが、自身の目標達成の為に、参加を決めました。

3人チームで応募との規定に基づき、台湾人のJとTが結成を合意してくれました。2人ともはスペイン語のクラスメートで、Jは日系エレクトロニクス企業のセールス、Tはデータリサーチ企業のファイナンス出身。共に製薬業界へのキャリアチェンジを強く希望しており、アジアの力をヨーロッパで発揮したい気持ちも強く、国籍の偏りには抵抗感 なく意気投合しました。

 

3つの壁

優勝に至る半年間に3回の提案を勝ち抜いていくのですが、振り返ると我ながら 戦いきったなという感じです。

 

第1の壁

第1ラウンド課題は、提起された大問への解決策をどう構成するか、という内容でした。ここではチーム結成直後にありがちな、チームダイナミクスの葛藤がありました。よく知る仲間かつ同じアジア人同士なので、お互いの勤勉さ、コミットメントには不安や不満が無い好条件スタートだった一方で、この時点では、実務的にお互い何が貢献できるのか探り合っている状態でした。音楽業界という特殊な業界出身の私は、そうではない業界出身の二人のキレる発言に圧倒されて出る幕が無い自分の姿を想像し、相当身構えていました。しかし、2人からは論理的につながらない(本人曰く「一連の」)提案や、目的が一切不明なアイデアが出始め早々に無法地帯となり、気づけばそれを一つ一つ詰問し、整理するのが私の役回りとなっていました。「意外と自分にも出来ることがある」と分かったときは心底嬉しいと思いました。結局、そんな形でチームメイトとの作業は進み、締切時間の直前になんとか提出に至りました。

 

第2の壁

第1ラウンド通過チームに次の課題がメールで伝達されました。他チームも順調に突破している様で今一つ競争の感覚が湧きません。第2ラウンドのお題は前回の提案内容をふまえ、より具体的な施策、つまり実行案を出すというもの。私たちは「入念なリサーチと「実現性」が鍵であると判断しました。が、二つの危機に直面します。最初の危機は、台湾人Tがファイナンス職インターンの面接準備のため最後の数日まで機能せず、実質チーム戦力が一人分喪失したことです。やむなくTの担当はファイナンス部分の提案のみと決め、それ以外を二人で行うことにしました。このとき台湾人Jが驚異的なリサーチ能力を発揮し、私の担当範囲の情報まで早急に見つけてプロジェクトを前に進めてくれたことには感嘆するばかりでした。

 

またチームにヘルスケア業界を経験した人間がいなかったため、自分たちの考える実行案が果たして現実的なのか、見当もつきません。そこで私はクラスのネットワークを使い、医者をやっているメキシコ人同級生のご主人や、ヘルスケア業界関係者とのインタビューをセットアップし、自分たちの仮提案を検証しながら、綿密で実現性のある提案をまとめていきました。

 

もう一つの危機は、プレゼン資料の提出期限が期末試験の前日だったことです。ケースコンペ用に5〜6つの具体施策をまとめるにはかなりの作業時間が必要で、授業用に毎日3ケースの準備をしつつ、スペイン語のクラス/試験勉強/就職活動をこなし、さらにケースコンペを同時進行することは、まさに地獄絵図そのものでした。他チームも例外ではなく、モチベーションが一気に下がっていく様子が見て取れました。Jと私はこのラウンドで諦めるチームが続出すると確信し、他チームより少しでも濃い提案ができれば十分に勝てる勝負だと信じる事にしました。この辛い状況の中で、締切間際にJが学校の成績を諦めてもいい、と言い出し、その言葉に支えられ戦意喪失をなんとか回避し、期限に間に合わせる事ができました。気づくと、チームの思考整理スピードがかなり早くなっており、私も彼らに負けられないと危機感を覚えました。第1ラウンドと比較して、この頃迄には、次に進めるだろうという自分たちなりの納得感と、確信、やりきった感が生まれていました。

 

第3の壁

私とJの予想が的中し、かなり多くのチームが第2ラウンドを放棄、もしくは形式上の提出をしていました。そして、ついに結果が伝達された日、周囲が沸き立つ様子も無く、どうやら私たちがIESE代表に選ばれ、最終戦でNovartisのボードメンバーにプレゼンをするチャンスを得たのだと知りました。IESE代表になった実感はゼロでしたが、3人ともここまで来たら優勝したい!と戦意を新たにしました。その後、Novartisからは最終ラウンド前夜に開催されるディナーの招待状が届きました。

 

私たちは当日迄の期間、まずこのコンペで歴代IESEに蓄積されたノウハウや知識等の情報収集を行い、最終ラウンドに備えることにしました。具体的には敗戦チームや昨年入賞した先輩チームに提案内容を共有してもらったり、ヘルスケア業界専門の教授と意見交換を行ったりしました。また偶然別の校内イベントでNovartisスタッフと知り合い、第2ラウンドのフィードバックや次回への準備事項を聞き出せるという幸運も重なりました。頭で考えるだけではなく、フットワーク軽く行動したことがこうしたアドバンテージを生んだのだと思います。

 

前日のディナーはNovartisの本社のグローバル人事本部長や、スペインオフィスのCEO,人事部長他蒼々たる顔ぶれによってホストされ、IESE,LBS,INSEAD, IE, ESADEから来た5チームがもてなされました。豪華なお酒はさることながら、チームごとに小さなテーブルに着席し、会社の方々が巡回しながら個々のプロフィールに関する質疑応答や、こちらの質問を受けてもらえる非常に希少な機会を得ました。コンペの結果はさておき、今後キャリア相談等でこのような面々と連絡を取り合える関係を築けるチャンスは他に無いでしょう。(一般的なリクルーティングイベントでは1社員に対し10人を優に越える学生がたかっています)また他チームの雰囲気から、それぞれに校風が感じ取れ、びっくりしました。自分が他校の学生達からどう思われたかわかりませんが、知らないうちに校風が身に付いてくるものなんですね。

 

この晩は11時過ぎに終了し、翌朝9時から最終ラウンドがスタートしました。ビデオクリップが流され、「携帯電話会社がこのプロジェクトに携わる場合、どうか?」というお題が発表されました.制限時間は3時間、その後に20分間のプレゼンを行います。この辺りの問題については今まで議論してきた課題であった為、これはいけるな、という感覚でした。オフィス到着時点で、プレゼンの9割は完成した状態。プレゼンの練習もした上で臨む最終ラウンドでは、課題に対応する部分に加筆修正を加える作業が主となり、今までほどの労力は必要なかったものの、割り当てられたミーティングルームに籠りました。定期的に社員の方が巡回してくる状況に、私は「緊張する。。」を連呼しました。他の二人は沈黙していましたが、内心緊張がはりつめていたのではないかと思います。

 

最終プレゼンを終えて、ついに受賞者発表の時となり、3位から発表されていきました。2位にも私たちの名前が呼ばれなかった時から優勝チームが発表される迄の間がこれほど恐ろしく長く感じられたことはありません。やっぱりダメか、あれでダメってどういうこと、と様々な憶測が頭をよぎる最中、ついに自分たちの名が優勝チームとして呼ばれた時には、一瞬時が止まった様で信じられず、横を見ると、3人全員が椅子から飛び上がっていました。全くヘルスケア業界において素人の私たちの努力が本当に報われたのです。1位になったことが信じられない瞬間でした。

 

 

最後にビジネススクールを検討中の皆さんへ、

 

私は2年間ある学生生活の1年目に、学生生活で最も思い出に残るこの(苦)嬉しい経験をすることができました。

 

コンペへの参加機会や様々なネットワーキングのチャンスは、IESEには十分ありますので、ご心配はなさらずに。合格後は代わりに1日24時間の使途を心配される様おススメします。ビジネスケースコンペティションはビジネススクール特有の行事ですし、一度は参加してもよいかもしれません。ご覧頂けるように、結果的に当初の参加目的の一つ、リアリティあるビジネスケースの体験を得た達成感よりも、アジア人3人が一丸となって実に多くの方々の支え、協力を得ながら結果を残せた喜びが強く、そこから私も様々な学びを得たと思います。

 

また仮にIESEに来なくとも、IESEのような2年制の学校に入学されたら、「2年あるから来年やろう」と後手にまわさず、一瞬一瞬の機会最大化を目指して過ごされると、卒業迄に何か結果を出せることもあると思います。

 

業界/職務チェンジを希望してMBAを志願される方はとても多いと思いますが、現在の厳しいJob market の中で、未経験者は門前払いされやすいのも悲しいですが現実です。

そんな中、後日、この経験をきっかけに製薬業界でのインターンが実現し、卒業後、製薬業界に進む道が開けたというありがたい出来事も有りました。率直に、ビジネススクールにあるチャンスは最大限に自分の学び、糧にして初めて本当に有効なチャンスになるのではないかと感じているところです。