Exchange Programの話 (2)

前回の続きです。私がYale SOMで選択した授業のうち、3つを簡単に紹介したいと思います。IESEの授業については、また改めてご紹介します。

 

Energy Systems Analysis – Prof. Arnulf Grubler

 

エネルギーの基本(単位変換や統計)から、エネルギー資源、エネルギーと経済、ファイナンス、気候変動まで、エネルギーシステム全体を俯瞰する授業です。この分野を学んだことのある人にとっては当然のことかもしれませんが、私にとってはこれまでの認識が至る所で覆りました。例えば;

  • 石炭→石油→天然ガスへの移行は、化石燃料間の移行でありながらクリーンさでは段違い。再生エネルギーでコンベンショナルなエネルギー源を置き換えるためには、土地資源の有限性が大きな制約となる
  • 化石燃料の確認埋蔵量は、既に気候変動(2度以内)の観点から許容可能な消費量の2倍を上回っており、「枯渇する」というより「すべて使うには多すぎる」と理解すべき
  • エネルギーシステム全体を俯瞰した時、もっとも有望な分野と思われるのがEnergy Efficiency。日本の都市は優れたEnergy Efficiencyをもち、この分野で優位に立てる
  • 気候変動に関し、平均気温を3度以内に抑えるという目標は、残念だがもはや実現可能な目標ではない。排出量の削減の努力と並行して、来たる気候変動に対する備えをすべき

どうでしょうか?ちなみに、教授はSchool of Forestry and Environmental Studiesに所属しており(かつオーストリアのIIASAという研究機関が本籍のようです)、受講生もその分野を専門とする学生が多いため、議論のレベルはかなり高いです。日本人学生は私だけのようでしたが、エネルギーの観点からみた日本の特殊性と先進性については何度も触れられていました。ちなみに教授は、最終講義・テスト終業後には、皆にピッツアとビールとMoonshine(度数90%以上というお酒)を皆に振舞うなど、ホスピタリティあふれる方でもあります。


Strategy, Technology and War – Prof. Paul Bracken

 

国家戦略、テクノロジーの発展と戦争について議論する授業。Cross-Listされてはいますが、紛れもなくSOMの教授によるSOMの授業です。これは米国広しといえどもユニークなものだそうです。トピックの例としては、

  • シリコンバレーにおけるテクノロジーの発展がどのようにペンタゴンと関係しているのか
  • 大統領の安全保障アドバイザーになったとして、”Grand Strategy”をどのように立案しプレゼンテーションすべきか。その際のシナリオ構築・分析やWar Gameの有用性
  • 冷戦後の”Second Nuclear Age”とも言うべき、Multi-polarで不安定な時代に、如何にして安定的な国際関係を築くのか。Cyber War やFinancial Warの安全保障上の意味合い

事例がアメリカの視点に偏っていますが、国家戦略的な観点から考えるという視点や、そのためのフレームワークを提供するということがこの講座の目的とのこと。ちなみに、この授業でも、日本は頻繁に議論の対象になっていました(例えば、仮に日本が核兵器保有国家になるという仮想の状況を想定して、それが東アジアの安定につながるのかあるいは不安定化するのか、など)。


Global Financial Crisis

– Secretary Timothy F. Geithner, Prof. Andrew Metrick


その名の通り、2008年の世界金融危機についての授業です。金融危機を専門とするメトリック教授と、その当時のキーパーソンであり、ニューヨーク連銀総裁を経て財務長官となったガイトナー氏が共同して講義を担当しました(1, 2, 3)。更に、2013年にノーベル経済学賞を受賞したRobert Siller教授もたびたび登壇し、住宅金融市場について行動経済学的視点からの考察の講義もありました(ちなみに同教授による行動経済学の授業もSOMで行われています)。


コストとダウンサイド


さて、Exchangeを考えるにあたっての留意点も記します。あまりにも当然ではあるのですが、MBAプログラムそのものがそうであるように、Exchange に行くにもコストとダウンサイドというものがあります。例えば、ビザ取得、住宅の確保、引っ越し、新しい生活環境への慣れ、といった点で追加的に費用と時間と手間がかかります。IESEというコミュニティで学び、バルセロナで生活する時間が少なくなるという機会費用もあります。また、すでに出来上がっているコミュニティに飛び込む力が、通常のMBA留学時よりも必要になります。待っているだけでは何も起こりません。逆に言えば、自分からSocializeする能力が最大限試される、チャレンジングな環境であるともいえます。


環境の異なるビジネススクールで1学期間を学ぶというExchangeという選択肢も、IESEでは実現できます。更に多様な経験されたい方、IESEを目指してみてははいかがでしょうか。