南アフリカでのインターンシップ

Class of 2017Mです。

 

 

今回は私が夏季休暇期間中に行った、ヨハネスブルグでのインターンシップについてお話ししたいと思います。7月初から8月中旬までの約7週間、他のビジネススクールの生徒2名とともに教育関連のNPO向けのコンサルティングプロジェクトを行いました。

まず前提として、私は社費派遣のためインターンと言っても就職を前提としたものではなく、「経験」に重きをおいて選びました。当該インターンも就職に直結するものではありませんが、この分野/私を採用した会社の活動に興味がある方、ネットワークの広がり、ユニークな内容という意味で、何か気づきがあればと思います。なお、本校における夏季休暇期間の活動とインターンシップの位置付けについてはこちらも併せてご参照ください。

 

       本インターンシップの特色

 まず、本インターンの採用元はアメリカのEmzingoという「Leadership Development」と「Social Impact」をキーワードとしたコンサルティングファームで、2009年にマドリードのIE Business Schoolの卒業生が設立した会社です。この会社では活動の一部として、各国のMBA学生や学部生を採用の上、新興国のNPO/起業家向けに無償でコンサルティングを行うプロジェクトを提供しており、私は今回ヨハネスブルグにて行われたものに参加しました。今回は、欧米のビジネススクール(一部その他の学校)より22名が参加し、各プロジェクトへ2-3名アサインされる形となりました(従い、実際に働くのは現地のNPO)。本プロジェクトは、通常のインターンと若干異なり、以下の三つの要素から成り立っています。

 

(1)    現地NPO向けコンサルティングサービス(6週間/月から木):通常のインターンと同様のイメージ。要は「働く」パート。

(2)    Leadership Development6週間/各金曜):所謂MBAのリーダーシップの授業の様なレクチャー(リーダーシップとは何か?等のディスカッション)や、自己診断テスト(強み/意思決定の仕方/性格等の診断)、心理カウンセラーとのコーチングセッション(自己分析と、それに基づきリーダーとして何を改善していきたいか、将来どういうことをしたいか等)、自分の生い立ちと価値観について発表しお互いを知るワークショップ、最後に参加者全員に対して夫々よりフィードバック。MBA同様、他人との関わり合いの中で自分を知り「高める」パート。

(3)    南アフリカ/Social Businessに関するレクチャー/フィールドワーク/企業訪問(オリエンテーション1週間、その後6週間/各金曜):南アの歴史、文化、人、経済、ビジネス等コンテクストを知る機会。具体的には、Apartheid Museum訪問、Impact investmentに関する講義、BEE(Black Economic Empowerment)に関するレクチャーとそれを専門に扱うコンサル訪問、スラム(南アではTownshipという)視察/起業家へのインタビュー 等、その国を「知る」パート。

基本的に働くのは同じNPOにアサインされた2-3名ですが、それ以外は参加者全員と寝食をともにしながら行います。

 

       参加を決めた理由

(1)    MBAでの学びを実践する機会

 最初の理由としては、一年間の学びを実践できる場を得たいと考えたことです。MBAのボトルネックとして、理論に偏る、実践向けではないというものが挙げられますが、個人的には「理論」と「実践」のバランスは非常にこだわってきた部分でもあり、特定のハードスキル(金融知識、マーケ等)のみならず、ソフトスキル(リーダーシップ等)も含めた実践の場を求めていました。

(2)    新しい経験を得る機会

 前述の通り、「経験」が重要なクライテリアでしたので、地域・文化・人・仕事内容全てで新しい経験ができる機会を求めていました。個人的に南アは前職で関わりがあったにも関わらず未踏の地であり、一般的な「危険なんでしょ。」というイメージからどうしても抜けられなかったので、この目でみたいと思いました。また、IESEからの参加者は例年少数(今年は私のみ)だと聞いていたので、新たなネットワーク、また違うコミュニティの中で自分を試す機会を選びました。

(3)    Social Businessについて知る機会

 上記の(2)にも一部関わりますが、最大の理由がこれです。これまでコモディティトレーダーとしてProfitを追い求める(もちろんそれだけではありませんが)という、Social Businessとは対極の様な日々を送っていました。その傍ら、社会にインパクトを与えるという点において、今やっているビジネスのやり方だけが唯一のオプションではないと感じ始めており、それとは違うダイナミクスで動く世界/視点に触れてみたいと思っていました。また、感覚的には興味があった分野ではあるものの、それを確かめる機会もなかなかなかったので、これを機にその「感覚」を確かめてみようと思ったのがきっかけでした。

 

       インターンシップ獲得までの経緯

 

 上記の様な理由でインターンを探していましたので、一般的に皆が使う様なIESEのファシリティは用いず、ピンポイントで似たような経験をしている方を探しました。幸い、一つ上の日本人の先輩(同様に社費派遣)の方が同様なモチベーションで昨年このインターンに参加しており、毎年2月末にIESEにて行われるDoing Good Doing Well (DGDW) Conference(欧州最大規模のSocial Impactのカンファレンス。欧州各国のビジネススクールの生徒がバルセロナに一同に会する)にて、EmzingoManaging Partnerの方を紹介してもらいました。その後は、ウェブサイトより正式にアプリケーションフォーム提出(3月中旬)しインタビュー(個人/グループディスカッション)を経て、正式に獲得に至りました(4月末)。

      インターンシップでの活動内容(主に業務内容)

 

 私が実際に働いた会社は、TEACH South Africaというフルタイムが5人にパートタイム/インターンが数名という小さなNPOでした。彼らは、主に地方の公立学校(つまり貧困層=黒人向け教育)における慢性的な教師不足、という南アの重要な社会問題の一つに取り組んでおり、南アの有名大学より新卒を採用し、2週間のトレーニングを積ませた後、2年間各公立学校に教師として派遣するという活動を行っています。その全ての活動を、主に現地の大手企業からのDonationにて賄っている為、定期的にドナーに対し、活動内容とそのインパクトを説明する必要があるのですが、課題はそのインパクトについて、何をどの様に評価したらいいか分からないというもので、従い、私たちのミッションはImpact Measurementを考案することでした。

課題解決に向けては、デスクリサーチの他に、設立者、従業員、ドナーへのインタビューをはじめ、学校へも赴き、学長や現場で教えている教師、生徒とも会話し、南アの教育事情の実態、何が本質的な問題で何をインパクトとして図るべきかを議論しました。また、たまたま今回の参加メンバー(別のプロジェクト)に教育分野のマスターを取っている人がいたので、彼女にもアドバイスを募りました。南ア独特のコンテクストとして、教師一人当たりの生徒数が多すぎる為テストが適当に実施され必ずしも学力が反映されないとか、生徒の健康問題(中学のクラスの十数パーセントがHIV感染者であるとか、十代半ばで妊娠する子がいるとか)、親が必ずしも教育への関心がないとか、そういったものが複雑に絡み合っている為、例えば成績(点数)などの単純な指標では彼らの活動の様子が反映されないといったことが分かりました。また教育という社会システムそのもののインパクトである以上、もっと長期的な視点で生徒の人生や内面に与える影響も見た方がいいという結論に至りました。そこで、私たちは、まずImpact Measurementとして、コンテクストを表すものとインパクトを評価するものに大別し、更に後者を「定量/定性」と「短期/長期」の軸に分け、それぞれのマトリックスで何を図るべきかを考案しました。

 とは言うものの、ここまでは2週間程度で大凡の提案が見え正直そこまで難しいものではありませんでしたが、本当の課題は、この限られたリソース(人的(人数+質)にもお金的にも)の中で「実際に自分たちの提案をどう実行するか」でした。特に私たちが南アを離れた後も自分たちで運営して行ってもらわなければならない。その為に、私たちは相当な議論を重ね、具体的に目に見える形で示すことと(例えばドナー向けレポートのサンプルを作成)、作業のフェーズを明確化し、更にToDoを細かいステップに分け、その都度の達成目標を置きました(達成の見える化はモチベーション維持の為にも有効です)。実際のデータ取得のプロセスにおいては、既存のオペレーションを見直し、無償ファシリティの活用(GoogleDoc等)、また複数人で行っている作業についてはフォーマットの定型化と責任者の明確化等、単なるImpact Measurementの考案に留まらないなるべくプラクティカルな提案をしました。最後にプレゼンをして私たちのインターンは終了しました。

 

(番外編)上記以外の活動として、週末にはインターン参加者全員と、ケープタウン(テーブルマウンテン、シャークダイブ)、サファリ、ハイキング等の小旅行や、毎日の寝食を通じて相当濃い時間を過ごしました。また、二週目には宿舎の隣の家が火事になり私が消防車を呼ぶ、最終週には宿舎の前でカージャックが起こるなど、なかなかのハプニングにも見舞われましたが、まぁ概ね安全でした笑

 

      テイクアウェイ

(1)    南アについての理解

 今回の経験を通じて、南ア自体のコンテクストについて本当に理解を深められたと思います。Apartheid20数年が経ち、表向きは民主国となっていますが、依然残る過去の政策のインパクトが政治・経済、文化、教育、ひいてはマインドセットまで当然根深く残っています。それは大きな社会問題である一方でビジネスチャンスでもあるという、日本では感じられない独特のコンテクストを理解する非常に貴重な機会となりました。一方、今の同年代の日本人にこれほどまでに自国の政治・経済、歴史に関心と責任感を持っている人がいるだろうかと、自戒の念にも駆られました。

 

(2)    Social Businessへの理解

 実際に現地のNPOの方と働いてみて、自分とはまた異なったモチベーション・使命感で働く姿に、初日から素直に感銘を受けました。上記の様なコンテクストのもと、多くの人が「社会に為に何かしたい、だけどどうしていいか分からない」というジレンマに陥っているケースは少なくなく、そこに単にMBAの知識に留まらず、私たちの持てるもので何か貢献できたら素晴らしいことだし、その余地が多分にあることもよく分かりました。そして、実際に働いてみて、自分がこういった分野に興味があることも確認することができました。特に教育は社会システムの根幹であり、貧困→教育レベルの低下→貧困という負のスパイラルから脱出する最大の解決策です。人の発展や成長に大きく関わるという意味で、特にこの分野への自分の興味が深いことについても再確認できました。私は社費なので、MBA後は元の会社に戻りますが、週末など活用してこういった活動を続けていこうと思っています。

 

(3)    チームへの貢献/チームをInitiateすることへの自信(リーダーシップ)

 今回のインターンの私の裏テーマとして、IESEの一年目ではなかなか実行仕切れなかった、「自分がイニシアチブを取ってチームひっぱる」というものがありました。今回の私のチームメートはどちらもIE Business School出身で、政府系出身のブラジル人(男性)、もと女優のマレーシア人でした。英語力の差もあり、頭の回転が早いブラジル人の彼が対外的なミーティングを仕切り、彼女は直感的な閃きで新しい観点を吹き込むという役割になったので、私は毎回のチームのミーティングでのアジェンダを決め、ToDoの洗い出しと進捗を管理し、プレゼンの骨子を考える役割を担うことで、大枠での議論の流れを引っ張ることに挑戦しました。何より彼らがいつも私の意見に最後まで耳を傾けてくれたことが大きいですが、各人の意見を尊重し融和させた上で、最終的にはある程度私のイメージする方向へ提案をもっていけたことで非常に大きな自信になりました。

 

 以上、今回のインターンシップは私とって新しい発見が毎日の様にあり、他のスクールの学生とのネットワーク、EmzingoTEACH SAの人々との出会い等、IESEの一年目の経験があってこそですが、それと同等か以上の価値が有る一ヶ月半となりました。このインターンに参加する為だけでもIESEに来て良かったと思えるくらいです笑。

 

 

 最後に、IESEではResponsibility Business ClubというSocial Businessのクラブがありますが、前述のカンファレンスを主催するなど欧州随一の規模とネットワークを誇っており、また、Social Businessマインドを持った生徒も数多くいる為、本格的にこの分野での活躍を考えている方にも非常に有意義なファシリティだと思います。以上、少し長くなりましたが、何かみなさんにとって参考になれば幸いです。